『木に花咲く』作品に向けて
なんとなく言わねばならぬと思うのですが、作品は一つの生命体だと思います。 生きて暮らしていることと同様の重みが、本当に成功したとき、目の前に到来するのです。 でも、あなた顔がキレイね、とか、髪の毛が好き、耳をナメたいと部分的に言われていても、そこに核心はありません。 人と付き合うみたいに、出会った後、赤の他人と折り合っていくように、好きなところも嫌なところも全部食べきってほしい。
今までわたしは、演劇を作ることはある人の走馬灯を見せ、共有することだと無謀に考えてきました。だからモノローグばかり作ったり、目の覚めるような密度の濃い時間をどれだけ発生させるかこだわり続けてきて。
次は、別役とともにダイアローグの世界に行きたいと思います。 死ぬ間際よりももう少し手前、一時間とちょっとのダイアローグ。
別役の一面はささやき、呟くような、希望の吐息。 もう一面はもっと重たい、いろんな物事に絡め取られ、見動きが出来ないような苦しみの時間。 それぞれの物語が私たちの傍にある現実を目指して織り込まれていきます。 私はこれがとても大切な時間だと思っています。 ぜひとも、見に来てください。